蚊取り線香

 ワンシーズン振りに蚊取り線香を取り出した。ライターを手にとった。それは古いバーのそれだった。繁華街の外れにあったショットバー、時々行っていた。大阪のホテルバー巡りをしていた時から少し経ってこの街に戻って来た辺りだと思う。店主のバーテンダーは若く20代の終わりか30代の始めで、今は音信のない甥と行ったのが最後で突然居なくなった。若いのにあんなバーをしたのだから金がその因だと想像した。ある日居なくなった。同業者にきいても口を濁して分からない。ハンサムな青年だった。時間が経つと灰になる蚊取り線香を思った。

しかし、朝ッパラからロックドリルがうるさいなあ！