浩介は  ②

 つまり、自らの政治主義や宗教に引き込もうとするのはまあ自然のことであり、自分と同化して欲しいというのも愛の側面かもしれないが、このX嬢の関係における浩介と大分の学生はそれが嫌である、と言うよりもまだ同化したい程付き合いが深くない、と言うことだったのだろう。
 堀の東側に老婆が二人ベンチに座って話をしている。穏やかな日曜日の朝、偶然の出会いに少し考え込んだが、所詮関係のない女だったのだと思って橋を渡りかけた時に携帯電話が震えた。
「今のは龍井さんでしょう?久しぶりね」とその姓か名が分からぬ女からのメールだった。やはりそうだったのだ、と安心と言うか腑に落ちた、と言うか、
「そうだよ」と返信したが、その後は期待もしていないが何も応答は無かった。あれは二回目だったか、少し飲みすぎたかな、と思った夜に駅北のホテルに
「ここに入ろうか!」と言ったことがあったなあ、と。
言った後で後悔したが、出した言葉は戻らない。
女は黙って消えたがね、、、

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