卯之町から高松へ

 「卯之町から高松へ」いしづち8号

<松山過ぎて>

「何を読んでるんですか？」男

「伊豆の踊り子」　　　　　女

「面白いですか？」

「まだ始めのほうなので」

「どこまで？」

「高松です」　

「お仕事？」

「はい」　　　　　　　　　女

「どんなお仕事？」

「繊維関係です、あなたは？」

「卯之町で縫製工場を」

「そうなんですか、卯之町懐かしい」

「住んでいたのですか？」

「いや野村町ですが」　　　女

「そうですか、あそこにも工場があります」

「ああ宇都宮さん？」

「そうです」

「酒屋さんですよね、実家が近くなんです」

「ほんとに！奇遇ですね」

「今は松山なんです、長く帰ってないのですが」

「高松で泊まりですか？」

「いや、展示会のあと慰労会があって最終で帰ります」

「そうですか、仕方ないですね、晩飯でもと」

「また機会があれば、よく卯之町にはいらっしゃるの？」

「月に一回は来ています、また連絡します、させて下さい」

「はい、ぜひに」