落葉樹 ④
大阪時代は基本的には良い思い出が多い、お金には不自由したが、なぜか悪い思い出はない。大阪が好きなんだろうね。キタもミナミも本町も嫌な思い出は余りない、嫌な思い出もあるんだろうが、時間と言う濾過紙が吸い取ってくれたのだろうね。
あのあたりで生活することはもうないだろう、亮輔は居酒屋、飯屋、地下鉄の食堂が思い浮かんでは消えて行く時間を楽しむように歩いていた。他界した人、九州に帰った人、結婚して離婚した人、多くの老若男女に記憶を馳せた。こんな歳になると色んなことに出会う、死、夢、快楽、失望、そしてあとは二日酔いかと呟きながら足を早めた、近頃はこの辺りにくると足が少し震える、とまでは行かないがままならぬようになる。あと少しだと足やこころを奮い立たせた。
自宅に着くと緑色の封書が郵便受けに入っていた。
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