顔  ❸

 「どんな事が予想できるかな?」と何処か上の空で金澤が言う。彼なりにいろんなケースを考えたのだろう。
「俺は文化系だから理系の事は分からないが、国つまり日本側は関係ないのかな?」と大槻
「いや、なかなか難しいらしい、色々回ったらしいよ、外務省、法務省、総務省とね、会社にもそう言った外国人との婚姻に詳しい弁護士もいてね、まあOKとなった、ところまでは聞いているよ」
彼は手を挙げてバーテンダーを呼びキューバリブレ、と言った。
「珍しいなあ、そんなコークを飲むなんて」と大槻
「まあなるようにしかならないか、日中の架け橋となるか、とかね」と金澤はピスタチオを掴もうとしたがピスタチオはカウンターの上を転がって行った。大槻は北京のホテルでの事を思い出した。たしかギムレットが分からない、ブルームーンが出来ない、あげくの果てはマティニも首を傾げるさまだ。今から思えば、あれはアメリカ的なカクテルは作らないというホテルだったかとも思えるが、そんな事あるかな、と金澤の顔をみた。


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