落葉樹  ②

 横堀川のそばのアパートは角地に立つ三角の部屋で4.5畳くらいの広さで風呂はない。吉澤と亮輔はラーメンとかキャベツを買ってロング缶のビールで晩飯を食っていた。亮輔の事務所が近くにあったが金が無いから、吉澤のアパートに寝泊まりしていた。帰りはいつも隠れ家に入るようにひっそりと入り電気はつけない、付けても周りをTシャツなどで灯が漏れないようにした。なぜなら吉澤はいつも二、三か月の家賃を滞納していたからだ。そんな生活はやがて亮輔の新生活によって解消されるが吉澤はあまり変わらない生活を送っていた。あれから20数年経つ、吉澤は今は特別養護老人ホームに入るくらいに身体能力が落ちている。まわりの同世代は病の重篤なもの、現役で仕事をしているもの、リタイアして悠々自適のもの、いろいろである、今堀端の落ち葉、枯れ葉をみてそれになぞらえて見てしまった亮輔は悪いものでも見たように下を向かなくなった。



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