空堀通り  ⑤ 401

 瑞恵は「私は芳美の高校の同級生です」と言った切り話をしない。
「私妊娠したの」と芳美が沈黙のなかぽつりと言った。またしばらく沈黙が続いた。店は仕事帰りのサラリーマンで混んできた。大きな声で話さないと聞こえないほどになっていた。
大槻は生ビールを半分くらい飲んでフーとため息を付いた。瑞恵が口を切った。
「産む訳には行かないでしょう?」と。
「あなたあの人と付き合ってるね?」と芳美が言ったが責める口調では無かった。
「ふー」と大槻は2度目のため息をついた。
「酷い人ね」と瑞恵が言った。店は怒鳴るくらいでないと聞こえないくらいになっていた。隣の席で
"生大2ちょう"と声が聞こえた。

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