少し話しが   

 いや、僕はね、少し喋り過ぎなんだよ、と康平は話し始めた。しかしね、だから女房とも意思の疎通が出来てるんだ、と。聞いていた私は、そんなものなんだと感心した。康平は何でも奥さんに話しするらしい。奥さんに腹が立ったらその理由、友人へのボヤキ、会社での部下の言動、なんでも話すらしい。そのことで、奥さんとの間隙、隙間が出ないようにしてるんだ、と。
 私は「君は浮気はしたことないのか?」と聞いた。「ありますよ」と簡単に言う。「それも言うのか?」と聞いた。「言いますよ」と平然と答える。
「奥さんはそれで?」と聞くと「あっそう」て言うだけです、と顔色変えずに答えた。
「変わってるね」
「そうですか、みなさんそうだと思ってました。普通は隠すらしいデスね」と無邪気に笑う。
主演の男を支える脇役、まわりの女優、ほかのチョイ役、みんな周りがあって成り立っているだ。主演だけで英雄が作られるわけじゃないんだ。男にはその奥さんや彼を無意識にでも支えている人がいる。またその支えているひとにもその人の影に日向になっている人がいるんだ、と私は思った。どんな生き方でもいい、後悔しない、いや今そうだ、と思うように生きたらいいんだよ、と私は改めて思った。

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