淡駕島    (21) ...

  第2部 

 島での生活が落ち着いて、海水浴場もそれなりの日常が普通になって行った。ハマチの養殖も平穏な日々を過ぎて行った。幸市は麗とは今まで以上に仲良くはなれず、まゆみは山村との仲を深めている様に見えた。彼はそのことは何も話さなかった。夜、食事のあと、二人が本島の灯りが見える岩陰のほうに歩いていく姿が時々見られた。そんな頃、天理大学の大井川がやってきた。体は大きくはないが、豪放な奴だった。口癖は「ロシアに行ってバイカル湖で小便してきてやる」だった。文学部でロシア語を専攻してるらしい。兎に角面白い奴だった。夕食のあと山村が出て行って二人だけになると、彼はいろんな話しをしてくれた。なんでもよく知っていて話も上手かった。彼の母親が佐垣十郎と従兄妹にあたるそうで、夏のバンガローには毎年一か月ほどアルバイトに来ている。

 つまり理(さとし、大井川)は、幸市は最初の夜から彼をこう呼んだ、まゆみや麗のまたいとこ、あるいはハトコになるわけだ。



(これは何処だ?)

コメント

人気の投稿