淡駕島   (25)

 大阪、堺筋本町

 少し浮かれ過ぎたか、甘く見てたか、業務拡張が身の程知らずだったか、単なるバブルの上に乗っかるビジネスだったのか、そんなことはないと、しかし、やがて売り上げが落ちていく。デパートの特売も売れなくなる、小売店への売り上げも下がりだし、資金繰りを考えだした。事務所の家賃、大型コンピューターのリース料が気になり出した。貧すりゃ貪するというか、貸し倒れが発生した、2000万だ、売り上げが右肩上がりの時なら、たいしたことの無い金額だが、下がりだしたこの時期のこの金額は大きい、取引先の先払い、手形の現金決済やら、なんとかやりくりしたが、少しずつ車は火を吹き始めていた。
 当時、架空の請求を上げていた会社があり、それをまた頼んだ。今までは先方に頼まれて書いていた請求書、請求金額から手数料を引いて先方に現金でバックする、まあ、頼まれれば受けていたが、こちらに主導権があった、こちらから頼むようになると、手数料も削られた。キャッシュフローはだんだんしんどくなってきた。事務員の尾形さんも、机で深刻な顔を見せ始めた。

山を登るのは時間が掛かるが、堕ちる時は瞬時である。

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