淡駕島    (23)


 「この辺りは浜のちょうど反対くらいかな?」と幸市が呟いた。二人は初めは楽しそうに話していたが、砂浜と大振りの岩がゴロゴロしているところを歩いている内にあまり話をしたくなった。
 小一時間は経ったころ、もう道らしいものは無くなっていた。浜は白く細かい砂が一面だが、何故ここが海水浴場にならなかったのか、ごろごろした岩のせいだろうか、または船着場が出来ないためだろうか。
 山の頂は近くに迫り、西側の浜とは何か違う不気味な感じがした、それは人がいないせいか、見慣れない景色のせいか分からなかい。我々は無口でただ歩いた。二人は後悔し始めたようだ。元気つける為に
「もう8割は過ぎたよ」と言ったが自信は無かった。見慣れない景色ばかりが続いていた。このまま異世界に入り込むのかとか、しかし、神戸や大阪は薄く見えるし、南には諸島の一つ鞍掛島が見えてきたから、もう安心だと思った。やがて本島が見えて来るはずだ。しかし、海岸には人間の痕跡はほとんど無かった。潮の流れのせいか漂流物もほとんど見当たらない。なぜ島巡りが流行らないか分かるような気がした。しばらくすると本島の島影が見えてきた。
「さあもうすぐだよ」と言うと二人は
「よかった」と同時に声を上げた。本当に心配していたことが分かった。その島巡りでは何も見つけられなかったし、いいことも無かったが二人との仲は大きく縮まった、特に芽衣とは。彼女の優しさや思いやりが二人の会話からわかった、そして幸市に好意があることも。

 二人は3時の船で帰って行った、帰りに住所と電話番号を書いたメモをくれた。その日まゆみは口をきいてくれなかった。



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