村上君の個性に負けた...


 目がクリッとした起き上がりこぼし、みたいな顔だった村上君、いまでもこの地にいるのかな?
 小学校の図工の時間、青い粘土で何かを作れ、と言う時間だった。僕は仁王さんの顔を作った。美術図鑑を見て作ったと思う。自分ではよく出来ていたと思った。
村上君は女性の顔の像を作っていた。モディリアーニの女性像のように瓜実顔の像だった。
 彼の像は優秀作となり、僕の作品は佳作にもならなかった。後で先生は「独創性、個性」だと言った。
作品自体の仕上がりは僕の方が上回っていたが、いかんせん模倣だった。村上君のモデルは知らないが、自分の想像力と創造力でその塑像を作った。
 その違い、創作に於ける決定的な違いをその時はよく理解出来なかった。後年分かるようになったが、その創造の力がやはり僕には無かったのか、なあと思う。
村上君は今でもこの地に住んでいるか、同窓会には一度もきた事がない。多分、街で偶然会ってもわからないだろうね、多分。
この塑像の事はよく思い出すんだよ。



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