淡駕島  .  (22)

 さて日々のルーティンというにはしんどい仕事の連続だが、若い二人連れの女達、グループの中のひとりぼっちの女性達などからは、よく声をかけられた、離島という開放感もあったのだろう。夜遅くテントに招かれたり、我々の下宿部屋(われわれはそう呼んでた)に秘密に招いたりした。何も起こらなかったが、、、、、
 ある日、客数の少ない月曜日、カンさんが引田から未だ戻らない午前に、神戸の女子大生二人とこの島を一周しようとなった。まゆみに言うと、少し眉をしかめたが、「しかたないわ」と許してくれた。
 彼女達は西宮にある短大の二年生、下宿をしているそうだ。二人は今治から来ているらしい。海水浴場を北に上がると、マエノ浜がある、ここにも海水浴場があり食堂や海の家が並んでいる。ここの方が人は多い、多くは日帰り客だ。そこを通り抜けて10分ほど歩くと網の浜に着く、ここにも海水浴場があり、ちょっとした料理屋もある。しかし、夏場だけだから大したことはないが、ヨットで来る連中はこの浜を利用するようだ。その浜を通り過ぎると、もう無人地帯になる。島の東側に向かう。軽四が辛うじて通れるような道が見える。島の東側には何も無いよとまゆみからは聞いていた。彼女達は未知への冒険の様に思っているようだ。幸市にしても初めての地域だ。まあ周囲4.か5kmの島だから危険があるとも思えない。
彼女達、ひとりは藤堂芽衣、一人は上川真理子と言った。芽衣は細身で髪が長い、真理子は小柄な色クロな女だった。
「的場さん、大学生?」が最初の言葉だった。
幸市との大学は近いからまた遊びにおいで、と話が進んだ。やがて、遠くは神戸、大阪が見える浜に着いた。ここからはもう島の西は全く見えないし、人々の喧騒も聞こえない。


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