忘却と日常  2


 台所でメモ用紙をさがしていたら、レンジの下にA四の紙があった、たまたま文章を見たら、平成25年12月24日の父親の手術同意書で書写のT病院のものだった.平成25年は2013年、ああ8年前だ。まだ勤めていた。ところがそんな事、つまり父親が大腿骨の手術をしたことなぞ全く忘れていた。家人も覚えていないと言う。父は夢前の老人ホームに入っており母親が他界して3年目だった年だ。もう大過去になってしまったのか、いやそんなことも覚えていないのか、と複雑な気持ちになった。絶え間のない現実の日常に失せていく記憶を仕方ないと思うほうがいいのか、あるいは不遜なことだと反省すべきかと思ったりもする。
そうしていると長い釘を打ち込んだ大腿骨のレントゲン写真が目に浮かんできた、嗚呼忘れてない、と安堵した、というかホットした。

 この書類はメモにせず、日記に挟んだ。

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