「白い闇」   ..


 深夜、悪夢に目が覚めた時、或いは小さな羽音にやむなく目を開けた時に、読むのはふさわしく無い小説である。ポルトガルのノーベル文学賞作家、ジョゼ・サラマーゴの「白い闇」。ある男が信号待ちに、突然失明する、目の前が霧に覆われたように白濁して何も見えなくなる。善意と言う嘘で、失明男を自宅に送って行きそのまま車を盗む男、失明男を診察した眼科医、快楽と生活の糧のために身体を売る若いおんな、次々と失明していく話し、荒唐無稽な話に見えるが、いまのコロナを思うと、ありえるかも、と考えてしまうから不思議だ。
人間の恐怖心は「枯れススキ」を敵兵に変えてしまうから、この恐怖が現実なのか、妄想なのかまだ先を読まないと分からない。たまたま「レビー小体型認知症」をネットで確かめていたら寝られなくなって、この小説を読み始めた。350ページのまだ50ページ足らず、1998年の小説、2001年刊行のハードカバー、古いせいか、あまり読まれてないせいか、紙面の端の部分がセピア色に変わっている。二、三日は読書に困らないようだ。

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