作家の
魚沼は昼前から出かけた。古き友人の柿坂庄司に会うために。平日の昼間は「応庄」と言う居酒屋に決めている。れいによって着くなり瓶ビールと揚げ豆腐のソテーを頼んだ。少し遅れて庄司が着いた。「今日はこれから人に会うから飲めない」と言う。話は日頃の交友と今の日常についての話しばかりだった。「君の悩みていうのかは、まあ知れてるよ、私なんぞは地獄はみたからな」と水をのみながら柿坂は話しをする。麟造は「そりゃその世界その世界の難所があるから、軽いと言われたらそれまでだなあ」とコップを空にした。「君は薮の中と言う芥川龍之介の小説を読んだか?」と聞いたら「多分」と返事がきた。何人かの共通の知人の話をして小一時間で別れた、秋の陽の午後はそれでもまだ高かった。「じゃまたな」と麟造は少し軽くなった肩を揺すぶりながら帰宅した。家人はエクササイズでいなかった。瓶ビール2本に酎ハイ一杯は重かったなあ!
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