出会い  ①


 ほら僕らが時々行く駅からすぐの居酒屋に行った、何故?家人が神戸におさんどんに行っていたから。普通、大概は飲みに出ないけど、なんかその日は出ようと出た、まあこれは一つの偶然でしたよ。金曜日だけど意外に客は少なく、カウンターの角に一人の女、テーブル席には1組だけあまり出来のよくないサラリーマン風の二人組、カウンターの女は黒髪のロングでベージュのコートを羽織っていた、ああすぐに帰るのか、誰かを待ってるのかと思った。その女から三つ離れた席に座って八重垣の冷酒と卵焼きとサンドマメのフライを頼んだ。女の相手はなかなか来ない、いや始めから一人かも知れない、と思い出したとき、ため息と言うか言葉にならない息を吐いた女は日本酒か焼酎かわからないが透明な酒を飲み干した。そんな様子が2回続いて私は正義感と言うかおせっかい心が湧いてきて、声を掛けた。
「大丈夫?」と、聞こえてないのか女はまた同じ動作、酒を飲む、嘆息まがいの息を吐き出す、とまた繰り返した。歳が分からないから「お嬢さん、大丈夫ですか?」と声を大きく掛けたら彼女がやっとこちらを向いた。まあ絶世とは言わないが綺麗と言う部類に入ると思われる女は、ニコッとは言わないが唇の端を緩めた。私は冷酒が少し回ってきて、いつもより大胆になっていたから、
「よかったら一緒に飲みませんか!」と言った。
多分、女は40代の終わりくらい、口紅も全てが薄めの化粧のようだ、「はい」か「うん」か分からないが同意の表情だから、私は「じゃあ」と席を近くには寄せた。彼女はよく飲んだ、強かった、冷酒を5本は飲んだかと思われた、私もかなり酔ってきた、今夜は一人だからまあゆっくりすればいいと、また冷酒を頼んだ。若い時なら、この女と、、とかあるがいまはもう無い、とは言わないが極めて薄くなっている、女はなかなか酔わない、いや酔っているのか分からない、ことばもしっかりしている。私はこのままでは酔い潰れると、
「じゃ僕は帰ります」と言うと女は
「もう少しだけ付き合って」と言う。
「だれか来るのじゃないの?」と
「もう来ないでしょ」と女
「じゃバーにしませんか」と言ってしまった、そして"あーしまった"と思った。

ー続くかー

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