奄美未練情  Ⅹ

 少し酒が効いてきたみたいで彼女は話しだした。
「北山さん、先に話しますね」と。
二人で申し込んだこと、亭主が急死したこと、を話しだしたのだ、堰きを切ったように。
 全くの他人がそこまで話すのか、しかし他人だからは話せるのか、刺身と茶碗蒸し風が出てきた、彼女のナラティブは終わらない。
 話は概ねこんなところだ。
 葬儀に見知らぬ女性が来ていた、彼女は幼児を連れていた。義母によると亡くなった義彦(主人)の子だと言ったそうだ。天崎さん達は千里にキャンバスのある大学のESSの先輩後輩で卒業してクラブの同窓会から付き合いが始まったとのこと、そして恋愛し結婚した、と。
「愛してました、彼もそうだと信じてました」
「それは間違い無かったと思います、しかし、、」と声を詰まらせた。結婚して15年、そんな素振りは全く無かったと、あの15年は何だったのかと。
「それが私の一人旅の理由です」と締めくくった。
北山は「奄美夢幻」の水割りを一息で飲み込んだ。
 彼女はまだ若いのにと一人旅を、と言うのを私が不審に思っていることの答えを話したかっだのだろう、がそれにしても、しばらく返事が出来なかった。彼女は少し赤くなっていた、とても美人に見えた、いや美人だった。
   海は碧く空はどこまでも青い


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