ゴーツーキャン(U)


 このキャンペーンを利用すると、30〜40%安くなる。それもあって来月四国に行くことにした。松山から宇和町を廻ろうかな、と。

 今から30年ほど前の東宇和郡宇和町、駅で言うと「卯之町」を思い出して寝られなくなった。卯建の町、高野長英の隠れ家、開明学校、野村町への峠と、当時、あの町で縫製工場をベースにして、小商いをしていたんだ。今から思えばあんな不効率な商売をよくやっていたもんだ、アホだったのか、先を見る目が無かったんだろうなあ。懐かしき想いと悔恨の思いが同時に沸騰するが、今更言ってもしかたない。

もうあの当時の面影はあるまいなあ、O君は生きているかしら、「富士廼屋」はあるかしら、あの中居はもういくつかな、「松屋」はどうなってるか今でも自称百年の糠床はあるのかな、野村町の寿司屋は何て名前やったかな、「深海魚」というスナックのそれこそ深海魚のようなママは、と思い出は尽きない、またもう辛かったことも発酵して甘い思いにさえなっている。反省も悔恨も忘却の彼方に飛び散ったが、色褪せたリリシズムだけはまだ澱のように残っている。いろんな人のお世話になったし、お世話もしたはずだが、と考え出したらほんとうに寝られなくなった。青春と言うほど若くはなかったが、まだまだ走り回れる年齢だった。

歳いけば

昔の全てが

良い話

尚里



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