浅田次郎「おもかげ」

 たまたま行った図書館に今日返却されたこの本があった。早速読み始める。救急治療室のシーンがあって、友人の事を思い出した。南大阪の近大病院のICUに担ぎ込まれた彼の見舞いに行った。看護師が「ご関係は?」と、「友人です」と返事。二回聞かれた、意味が分かった。家族です、と言えば会えた。しかし、三回「友人です」と。そんな話が作中にあった。だから会えずに、メモをその綺麗な背の高い看護師(マスクで見えたのは眼だけだったが)に預けた。"お前が死ぬのは遅すぎる、もっと早く死ぬべきだった、だから今は生きていけ"と。幸い彼は無事、退院した。彼とは大阪農人橋近くのワンルームで隠れるようにふたりで生活していた、半年ほど。    金が無かった。2人とも。

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