若い時のように

 「若い時のように、闇雲に人が恋しいとか、逢いたいとか思うようなことが無くなったね」

「それは良いことなの？悪いことなの？」

「良いとか悪いじゃなくて、そうなっただけの話だよ」

「きげんがわるいの？」

「いや、悪くないよ、つまり、執着しなくなったということだろうな」

「面白くなさそう」

「そうだね、逢いたい、あれしたい、行きたい、見たい、と思っているほうがいいよ」

「欲望が無くなったのか？」

「いや無くなったわけじゃなくて、それを抑えること、つまり自分を騙すことが出来るようになった、てことかな？」

「それってつまらなくない？」

「ある意味、つまらないね」

「抜け殻、か？」

「違うよ、人は自分のために生きてるのじゃない、つまり他人の為と言うか他人との関係性の中で生きてるてこと、だよ」

「余計に分からなくなったよ」

「君には無理だよ」

「もう」

「冷酒くれる！"手取川"で」

ヘーい！