一瞬の夏


 沢木耕太郎のルポに「一瞬の夏」と言うのがある。ボクサーのカシアス内藤を追っていくルポルタージュだ。オリンピック女子柔道の阿部詩選手の敗退のあとの号泣を見てその「一瞬の夏」を思った。東京オリンピック金メダルから3年、練習からマスコミ取材、そして家族や周りの期待を背負ってパリに来て、その夢は一瞬にして消えた夏だった。しかし、あれだけ号泣できることが羨ましく思った、少なくともあれだけの悲しみ、立てないほどの悲しみを表せるほどに掛けた夢があったことが羨ましい。それは確かに悲しい涙ではあるが、3年間の苦闘を洗い流してくれる涙でもあったはずだから。

「パリは燃えているか!」と聞いたヒトラー、「パリは泣いているか!」と。

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