白髪が一本    4○

 「用心棒日月抄」の中の"夜鷹を切る"と言う短編を読んでいた。主人公の青江又八郎が住まいの長家の端の部屋に居る夜鷹のおさきと交(から)むシーンがある。
 おさきのあとをつけ回す男から守ってやった又八郎、ひまだからと用心棒を引き受ける、「飯だけ食わせてくれたらいい」と言うがおさきが「前金」代わりだと身体を預けるシーンだ。
 そのページの終わりに白髪が挟まれてあった。あまりに透明だから初めはテグスかな、とも思ったが、根元を見るとやはり白髪だ。7〜8cmはある。その身体を預けるシーンだが、淡々とした描写だが妙になまなましさがある。私の前にこの本を借りた人は、このシーンを読みながら、少し頭を掻きおさきを想像したのではないか、おそらく寝ながら本を読んでいたであろう一人の老人を私は思い浮かべた。その老人はふと色欲を感じたのではないか、と、その証拠が一本の白髪だったと、、、

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