男鹿島   (18)..


 岡山港でイワシの冷凍餌の積み込みが終わったのが7時、すぐに坊瀬島まで折り返す、皆んな眠い、佐垣兄が「しばらく舵を」と、免許はないが、舵取りくらいは時々していたし、「あいよ」と舵輪を握った。 接岸した岸壁から波止の切れ目まですぐなのに目を開いていられない、まあ少しくらいはと目を瞑るともう眠り始める。あっと気がついたらあと波止まで10mもない、兄貴を起こし「おい、えらいことや!」と叫んだ。兄はすぐにゴスタンに戻しあと2mで船は止まった。
 姫島からの帰りでも、あそこまで寝ようと目を閉じたら、気がついたら島の間を抜けていた、なんてのも何回かあった。海の事故が何故起こるか、あんな広いところで何故衝突するか、このことも案外こういうことなのかもしれない。実際の海難事故はお互いが避けるだろう、だろうと言ううちに衝突するそうらしい。

 船が網場に着く頃には太陽は真上あたりまで上り、冷凍は溶け出し、イワシの脂で滑るし、持ちにくいし作業は困難を極める、おまけにイワシの脂は濃いくて、脚に擦り傷などがあるとそこから染み込んでミミズ腫れになる。最後の方は網で掬わないと引き上げられない、それくらいどろどろになっている。全て降ろし、船底を洗い、陸(おか)に上がればもう1時になっていた。カレーライスを駆け込むとバタンキューだった。

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