男鹿島    ③ u

 山村は顔見知りのようで、「よおっ!」た声を掛けた。すぐ横には軽トラックが止まっている。女性は「まゆみです」と名乗って、車に乗るように促した。1kmほど離れたイシの浜に行くそうだ。二人乗りだから私が真ん中に座り山村が最後に乗った。私はまゆみと接しているので出来るだけ離れるように座ったがまゆみは平気な様子だった。海岸沿いの砂利道を5分ほどでそこについた。鉄骨スレート張りの屋根がありその奥に事務所らしきものがあった。出迎えてくれたのは南国生まれみたいな小太りの女性だった。
「いらっしゃい。よろしくね」と野太い声で挨拶されて、幸市は「的場です」と答えた。山村に促されて歩いて二、三分の宿泊所に着いた。小さかった玄関と上りがまち、その奥に8畳程の畳の間があった。
「ここでふた月や」と山村が叫び、床にどっと大の字になった。


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