男鹿島   (20) ..


   バブルの始まりは1985年のニューヨークの老舗ホテル「プラザホテル」の合意からである。大蔵大臣竹下登の円高容認がこの事の起こりである。今から思えばバブルのおかげだった事も多い。誰がやっても儲かる時代だったかもしれない。

 幸市が買った堺筋本町のワンルームマンション、6坪一間、これが950万円、今なら笑い話だが、すぐに2000マンで売れる時代だった。郡里銀行の外回りが「隣は10坪あります、いまなら3000万で買えますよ」と。
 郡里銀行は関西では一位の地銀である。幸市は門真に借りている倉庫兼事務所もあり、ここは大阪で遅くなった時に泊まる、また大阪の得意先の接待の為、くらいしか役に立たないからと、この話は見送った。少しの間は「惜しいことをした」と悔やんだ。その部屋は4000万円近くまで値をあげたからだ。

その後、
飲み仲間の商社や大手繊維会社の連中が何人か破産した話を聞いた。不良マンション不良在庫を個人で持ち過ぎた時代でもあった。

 大阪を離れて40年、今の時代、6坪は500マンでも売れなくなっていた。 
ビギナーズラック、怖いもの知らず、が、やがて何も知らない「貧乏人のおぼっちゃま」になっていくとは、その時は夢にも思わなかった。

(第一部  完)

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