「天路の旅人」

 読了。573ページ。
 前大戦時、西川一三なる日本の密偵が内蒙古から寧夏省、甘粛、青海省を経てチベット、インド、そして終戦、日本への帰国。我々には縁のない中国西部への、目的はあるが成果のない旅?  ラマ教、チベット仏教、読めない漢字の街、わからないままに読み進み、終わった。とにかく人の名前が覚えられない本だった。この西川一三の旅が無意味だとまで言わない、言えないが、人はとにかく旅をするものなのか、と。
 最後に沢木は「もし機会があればこの経路で自分もいきたい」と2022年9月に書いている。彼は私と同い年、「もうこの歳だからNYなんて、とても」と言っている自分が情けなくなった。
作中、6歳の男の子がパンチェンラマに選ばれる話は、確かNHKのドキュメンタリーで観たよ。

本の終わりに近づくと西川一三が何故旅行をし続けたかが分かりかけた気がした、それは「なぜ私はこの、何の役にも立たない本を読み続けるのか」の問いへの同じ答えのように見えたから、である。
 人は何故旅をするか、人は何故本を読むか?
読み終わったのが5時過ぎ、いい匂いがするから階下に行く「人は何故旅をするか?」と家人に言うと、家人は「家が嫌だから」と、ははーん、これも一つか、と。

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