鮎と恥    1〜


 BSを観ていたら鮎の番組があった。鮎と聞くと思い出す恥ずかしいことがある。あれは30代の始めころかな。心斎橋の大丸とそごうの間を東に行くと雑居ビルの間に小さな路地があり、一番奥にカウンター10席足らずの飲み屋があった。週に一回か二回は行っていた。よく混んでる店だった。女将は熱烈なひばりファンだった。常連客ばかりで、綺麗な女の人、40くらいかな、と50くらいの紳士のアベックもよく来ていた。ある日、その綺麗な女の人の隣になって、男はなかなか来なかった。私の右足がその女の左脚に当たるんだが、女が逃げない、ていうか避けないので私はますます足を引っ付けた。するとその女性が「まあ足がよく当たるわね」みたいな事を独り言のように言った。彼女は私に直接「やめて」と言わないで、つまり恥をかかさないように上手く"やめて"と言ったわけだ。辛抱仕切れなくなったのだろうね。私は恥ずかしかった、少しはモテている気になっていたから、しばらくして相方の紳士がやってきた「今日は大漁や」と十匹ほどの鮎を手にぶら下げて。あの二人は夫婦ではなかったと思う。

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