古庄村物語 その6 933




 それから一週間が経った。あの村に2泊投宿して1ヶ月が経った。もうコードの事はどうでもよくなっていた。車に付けていたコードを自宅に持ち帰り代用していた、それに家人のコードもあった。買っても1000円くらいのものだ。ただ以前余呉湖に行った時も旅館に忘れたから、やはり一度は邪魔くさくてもきちんと返送してもらおうと思ったに過ぎない。そして役場だからそれくらいはしてくれるだろうとの思いもあった。簡単なことだ、と。ところがそうでは無かったようだ、大袈裟に言うと性善説を信じたかったのだろう。そしてもうあの村には行かないだろうとの漠然たる思いもあった。秋の陽が早く落ちるようになった。山の木々も色付き始めた。今頃の古庄村はもう朝晩に毛布が要るくらいだろう。2日目に通り掛かった小六の女の子もジャージの上下になって通っているに違いない。あの村の子はどの子も人懐っこい。10数年前のカルビの子も恥ずかしそうにしながら近寄ってきた。あの子はもう24〜5になっているだろう。それだけ我々も歳をとったわけだ。グループの二人は他界し二人はこの会合にも来なくなった。時間が変えた、いや我々が時間という媒体で変わって行ったのだ、と黒崎は思った。

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