古庄村物語 その8 完


 大阪へ出ようとした朝、郵便箱に手紙が入っていた。黒崎が送った返信用の封筒だ。80円切手が2枚と不足の20円分が貼ってあった。それを手に持って駅に向かった。大阪まで1時間ある。電車の中で封筒を開けた。コードを巻くように短い手紙が入っていた。
 「返送が遅くなってすみません。やろうやろうと日が経って行きました。総務と言うのはなんでもしなくてはならないので結構忙しいのです。しかし申し訳ありません。あなた方の事はよく覚えています。何回も来ていただいてありがとうございます。これに懲りずにまたおいでください。塩川君(お母さんはいませんの子)は同級生です。彼は今仙台に居ると思います。311のボランティアでそのままそこに住み着いたそうです、では失礼します。遅くなった事をお詫びします」

 黒崎は恥ずかしくて手紙を握りしめていた、人の善意を信じていたはずなのに、一時は疑った自分が恥ずかしくなった。電車は大阪駅に近いていた。大阪の新名所が右手に見える。グラングリーン大阪の芝生の緑が目に沁みた。そして今日の会合はきっと楽しいものになると確信した。

       完

(最後までお読み頂きありがとうございました。人生は感謝の気持ちをわすれてはなりません)


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