「ここより他の場所」

 と言う大江健三郎の小説がある。初出は1957年だから私は10歳くらいだが、読んだのは20歳くらいの時にだろう。小説には「情人」と言う言葉がやたら出てくる。設定では22歳の青年と19歳の情人と言うことだが、当時(小説を読んだ時)この情人と言う言葉が新鮮だった、それは淫靡で快楽へのチケットの様な響きを持っていた。愛人とは違う勿論恋人とはちがう言葉だった。つまり情を交わすだけの人(この場合は女)と言う意味だ、愛は無い恋もしていない、その情人と言う言葉だけが向こうから歩いて来るようだった日々が50数年前に有ったことを校庭の芝生と共に思い出した。



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