村上春樹

 短編集"女のいない男たち"の中に「独立器官」と言うのがある。ハンサムでよく流行っている美容整形医の話である。彼は独身でプレイボーイで絶えず複数のガールフレンドがいる。相手は既婚者か彼が第二のボーイフレンドで、彼は彼女等に拘束もされないし、深い恋心も持たない。ところがある女性に深く惹かれてしまう。子供もいる既婚者である。しかし、その彼女は彼も亭主も子供もほっぽり出して、ある男に走ってしまう、男は剣呑な男、後で聞くことになるが相当なお金も彼女に取られていたらしい。整形医は食事も取らなくなり、仕事も生きることも放擲し、やがて死んでしまう。整形医はかってこんな事を言っていたと話し手の作家は言う「女には独立器官がある、どんなウソだろうがその器官を通して言うから心は痛まない」と。
 作家というのは"あり得ないだろうなあ"ということを"あり得る"ように書くことのできる能力のある人、だと思う。「嘘やろ!」と思うが、ありうることかもしれないね、と。
 村上春樹もこんな短編はやはり素晴らしいと思う。短編集は読了、但し彼の作品によくジャズが出てくるから、あれはあんな曲だなあ、とネットでその度に調べるから何度も中断する、例えばコールマン・ホウキンス「ジェリコの戦い」タンタン、タンタンタータタン、だったなあと調べる、とか、、


コメント

人気の投稿